ブログ紹介

フィリピン・バギオ市在住 ㈱TOYOTAのブログです。旅日記・書評・メモなどなんでも詰め込むnaotonoteの文字通りオンライン版。
現在は英語学校 PELTHで働いています。過去のフィリピン編の記事は、学校のブログに転載しています。

2008-04-14

実録・ゴルゴ13

【欧州人物観察記 Edward Hattori編

服部さんとの出会いは、12月のアタマ、クリスマスのムードが漂うドイツのミュンヘンだった。ミュンヘンには12月と、帰国間際の1月の計2回行ったが、2回とも服部さんと遭遇した。

ホステルのラウンジで飲みながら旅日記書いていると、ジャージ姿の日本人のおっちゃんが、ビール片手に声をかけてくる。こっちは日記書いて集中しているのに、おっちゃんのマシンガントークが止まらない。

半分は聞き流しつつ聞いていると、日系企業のドイツ支社で働いていたところクビになり、安いユースホステルに住み着いているのだという。日本で言ったらネットカフェ難民みたいなもんだ。

しかし、服部さんはそこらの難民とは違う。なんと、日本の外務省から国際指名手配を受けている難民さんなのだ。

外務省公安4課。要は日本版のCIAみたいな部署。組織のメンツもあるので、捕まったら即・刑務所送りになる(らしい。というか本当にそんな部署があるのかどうか定かではない)。

さて、その服部さんだけれども、なぜ指名手配を受けているのか。
ここが重要。

服部さんはドイツの帰国子女で、大学時代は日本にいたらしいが、日本の没個人社会に肌が合わず、若いころから外国人コミュニティに出入りし、彼らの勧めで日本の労働条件の悪さについて、海外紙に投稿をしまくっていたのだという。

時代はちょうど冷戦体制の末期。日本型経営に世界の関心が集まる中、あまりにも日本の実情に肉薄した服部さんのレポートは、日本の国益を損ねるとして、そのときから外務省に目をつけられていたらしい。

海外支社勤務になっても、服部さんの日本批判の筆はやまず、会社とのトラブルも絶えなかったそうだ。服部さんによると、陰で常に外務省からの妨害があったらしい。

「出る杭は打たれる」は日本の悪習だが、これを服部さんは毛嫌いした。

それがやがて、日本への帰属意識を徹底的に薄めた。 最近も、イギリスの大手新聞・ガーディアン紙に日本の労働条件についての投稿をし、それが3週にわたって掲載され(エドワード・ハットリの筆名)、大反響を呼んだそうだ。

公安4課はその反応の大きさに震えあがり、ついに超法規的措置として指名手配にいたった。

…らしい。

さて、この時点でもう怪しいと思ったアナタ。こっからもっと凄くなるので、心のご準備を。

服部さんの「潜伏」しているユースホステルは、宿泊名簿があるので、簡単に足がつく。実際に僕の名前も載っていたはずである。じゃあ、何故彼はつかまらないのか。

実は服部さんには、韓国人で超能力者の彼女がいるのだ。予知能力が使える彼女は、当局のガサ入れがあるとそれを察知し、服部さんはその前に逃げてしまう。今までホステルには外務省の職員が何度も来たが、そのたびにタイミングよく逃げてしまうらしい。

超能力

これも実は、服部さんが追われる原因の一つなんだそうな。冷戦期、ソ連が超能力を諜報に転用として研究していたのは有名な話。服部さん自身は超能力者ではないが、昔も超能力者の友人がいたということで、それを利用しようとする日本政府から目をつけられていたそうだ。おまけに彼には、対外スピーカーとしての発言力があることで、さらに危険視されていたという。

…。

さらにすごいのは、金正日と知り合いで、彼から勲章をもらったこともあるという。商社時代に、北朝鮮に日本の使われていない鉄道車両を寄付したのがきっかけらしい。話は長くなるので省略するが、ジョンナムやその他軍の将軍など、北朝鮮のトップとのパイプはかなり太いらしい。同じことを韓国にもしたおかげで、韓国の空港は、顔パスなんだとか。

服部さんのパスポートはあと1年で切れる。やばくなったら、韓国か北朝鮮に亡命する気らしい。「日本よりは、まだいいだろう」そう言っていた。

カルロス・ゴーン、奥田会長…。他にも彼の知り合いのビッグネームは枚挙に暇がない。…とまぁ後から聞けばかなり胡散臭い話なのだが、服部さんと話していて、頭のいい人であることは感じたのも事実。実際に、英語・ドイツ語・フランス語・朝鮮語・北京語ペラペラのマルチリンガル、何よりも知識量は半端ない(おかげで、よりトンデモ論っぽく聞こえてしまうのだけど)。


ヨーロッパでは放浪中に佐藤優・手島龍一の本を読んでいたせいで、こんな人間が身近にいることに疑いを持たなかったのも、服部さんの話に食い入る大きな要因だった。


俺は、ゴルゴ13の世界に住んでいるんだよ

そのセリフが自己陶酔だったのか、あるいは真実だったのかは、今となっては分からない。

…。

…え?国際指名手配の人間についてここまで暴露しちゃっていいのかって?
大丈夫です。彼の話が本当なら、超能力使ってまた逃げるはずですから(笑)

あ、ちなみに潜伏先は、ミュンヘン中央駅前のEURO YOUTH HOSTELです。


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そいや『ゴルゴ13』アニメ化するらしいですね。
声は舘ひろし?せっかく渋いのに、ゴルゴあんま喋んねー。

数あるゴルゴの中でも、この話が一番好きです。
「全て人民のもの」

ゴルゴはあの怪僧○○の末裔だったのだ!
そして服部さんはたぶん、ゴルゴの読みすぎだったのだ!






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『豊田家と松下家』


トヨタ自動車の創業家・豊田と、松下電機産業の創業家・松下。初代、豊田佐吉・松下幸之助に始まり、最近の渡辺・大坪両社長にまで到る、トヨタVSマツシタの対比列伝




世界でなお圧倒的なブランド力を誇るTOYOTAと、創業家の名を捨てPanasonicに生まれ変わった松下。この2社の違いとは何か?両社における、創業家の役割の違いとは?両者を対比させることで、お互いの特性が浮き彫りになってくる構成です。とっても読みやすい。

あくまで「会社における創業家の位置」がメインテーマなので、両社の社史を俯瞰する本ではありません。登場人物は、ほとんどが創業家の人間と、社長クラス。『プロジェクトX』みたいな、汗と涙の現場ドラマではなく、『華麗なる一族』の世界に近い本です。
「結果を出さなければ跡を継げない帝王学」豊田と、「失敗と挫折を知らない帝王学」松下(P47)
この違いが、両社の創業家の位置を変えてしまったようです。
…豊田家と松下家の創業家の命運を分けたものは、創業家への求心力を形に出来たものと、そうでなかったものとの違いであった」(P197)
歴史の長さでは比較にもなりませんが、天皇家と豊田家を比べてみても面白いかもしれない。創業家を後ろ盾にして改革を進めたトヨタの奥田碩と、「親創業家」「反創業家」の2項対立を生んでしまった松下の山下俊彦・中村邦夫の比較も興味深いです。

「企業を立ち上げたい。ゆくゆくは息子に継がせたい」と思う人には必読の書じゃないでしょうか。まぁ今日びそんな価値観を持つ人、あんまりいないと思うけど(笑) むしろ、親に会社を継げといわれている創業家2世・3世が読むと面白いのかも。実は友人にもそのような境遇にいる奴がいるので、ちょっと勧めてみたいと思ってます。

あと、副作用というか、『島耕作』シリーズの副読本としてもオススメです。『島耕作』の初芝は松下がモデルとなっていますが、そのせいか木野・大泉・中沢・郡山などの歴代初芝社長のモデル、この人か!って発見が続発することうけあいです。誰かトヨタ自動車をモデルにしたサラリーマン漫画描いてくれないかなぁ。

2008-04-04

『ウェブ人間論』

梅田望夫の『ウェブ進化論』シリーズ。今回のテーマは、「WEB2.0で、人間はどう変わるか」



イノベーションの21世紀、「大きな時代の変わり目」を生きる同時代人としても、歴史を勉強する学生としても、非常に興味深いテーマです。

ウェブと人間との関係論でもあり、かつ、WEB2.0時代の人間とはいかなる人種かを考察する対談でもあります。その意味では、あとがきにも書いてあるとおり「ウェブ・人間論」と「ウェブ人間・論」の果てしない往復。作家・平野啓一郎との対談形式です。技術論がメインだった『進化論』に比べて、作家さんとの対談ということもあってか、やはり「人間」に重点が置かれています。

この形式が、うまく当たったんじゃないかと思います。対談の最たるメリットは、お互いの意見が対比されることで、主張の違いや共通点が浮き彫りになることですが、比較的つっこみ精神旺盛のの平野さんと、オプティミスト・梅田さんのやりとりが、とってもテンポいいです。
梅田さんの、
ブログを書き始めて、専門以外のことだと…読んだ本の一部を抜き書きしたりするのって、本当に幸せな時間だなとか、そんなことに思い至るようになった。それは大げさな言い方をすれば、自分で自分を発見したということだったんですよ(P162)

っていうの、実感です。まさしく「書く」という行為は、自分の考えていることを見つける作業だと思います。ブログの登場によって「一億総表現時代」を迎えつつある今、万事相対主義のこの時代で、人々がアイデンティティ・クライシスから身を守るための道具としても、ウェブは機能するんじゃないでしょうか。ウェブという道具を上手く使うことで、環境が目まぐるしく変化する現代でも、自分との対話、所属コミュニティとの対話が容易になる。


というか、対談相手の平野さん、かなり面白いです。世代的にはひとつかふたつ上のニューアカ世代(本人談)。この対談本を読むまで名前を知りませんでしたが、芥川賞受賞者だったんですね。

平野さんの言葉からは、「隙あらば相手が予想もしていなかった鋭い質問をしてやろう」ってオーラが感じられて、対談の緊張感がとても伝わってきます。この本が「対談者同士の自己満トーク」にならなかったのは、平野さんの旺盛なツッコミ精神に拠るところが大きいと思いますね。

もちろん、全ての主張に賛同できるわけじゃありませんが、その小説『葬送』がドラクロワやショパン、ジョルジュ・サンドが登場する19世紀が舞台だとは知らなかった…。19世紀なんて、一番好きな時代じゃないか。早く言ってくれよ、それを…。というわけで、平野作品『葬送』探してみます。どうやら3部作の最後らしいので、場合によっては本格的に平野作品にはまっちゃう可能性もありますね。自分はシリーズものに弱いので…。